からだ読本チューブトレーニングとリハビリテーション
山本利春 監修、1997年7月10日発行、1600円+税 山海堂 ISBN 4-381-10246-0


第1章 チューブトレーニングって何だ!?
第2章 リハビリに活かすチューブトレーニングとストレッチング
第3章 スポーツ動作に活かすチューブトレーニング
第4章 シェイプアップと健康作りに活かすチューブエクササイズ
第5章 骨と筋肉のトレーニングの原則


はじめに

 私たちは、アスリートやスポーツマンにかかわらず、みんな自分の身体に興味と関心を持っている。ところが、関心の割には身体の仕組みや働きについて学んだり、メンテナンスしたりすることを怠りがちである。たしかに身体は、自分の意志とかかわりなく機能していることも多く、その仕組みや働きを知らなくとも生きていられるし、少しぐらい太ったり体力が落ちても日常生活にそれほどの支障はないので、ついつい後回しになってしまうからだろう。しかし、ひとたび健康をそこねて病気になったり、傷害を負って動きがままならなくなると、初めてそこで健康のありがたさに気づき、あわてて自分の身体について考えたり、知識を得ようとしたり、体力を取り戻そうとする。これでは現代人として賢明とはいえない。
 高齢化社会に向かって、ますます健康の自己管理が重要視されている。こうしたとき、まず心がけなければならないことは、自分の身体に関心を持ち、ふだんから身体機能を衰えさせることなく十分に能力を発揮できるように準備しておくことが大切である。異常(病気)になったときにも対応できる体力を維持しておきたい。
 身体機能を衰えさせないようにするには、いうまでもなく、適度な運動を継続して体力を維持向上させてゆくことが不可欠である。病気やケガはいつ襲ってくるかわからないし、不可抗力の場合もあるが、幸いなことに、体力は自分の意志と努力によって維持向上させることができる。アスリートはもちろん、一般人においても、ケガを負う前に身体を正しくメンテナンスしておくことが大切である。しかし、ひとくちに運動といっても、それを実践し継続するのは難しい。とりわけ一般人の場合は、よほどの動機付けでもない限り、長期間にわたって継続実践できるものではない。しかも、経済的に負担になったり危険をともなう運動であっては、なおさら継続するのは難しい。
 こうした要望に応え、身近なエクササイズツールとして簡便に活用できる運動のひとつとして推奨できるのがゴム製のチューブやバンドによるチューブトレーニングである。負荷の強度が自由にコントロールできるので体力に合わせた運動ができるし、負荷の方向が自在に設定できるので動きに合わせたトレーニングが可能である。ダンベルのように落としてケガをすることもないし、場所もとらない。持ち運びも便利なので、いつでも、どこでも使用でき、正しい動作を身につけることによって安全で効率的なエクササイズが可能となる。本書では、スポーツ傷害の予防と改善に活用するチューブトレーニング、スポーツの実際動作に合わせた筋力強化としてのチューブトレーニングを中心に、家庭や職場でも手軽に実践できるチューブトレーニングのいろいろを紹介してある。スポーツトレーニングとしてばかりでなく、運動不足解消、体力の維持・増進、シェイプアップなど目的に合わせ、あせらず、じっくり取組んでいただければ幸いである。
山本利春