測定と評価
現場に活かすコンディショニングの科学
山本利春、2001年4月20日発行、3,000円+税 ブックハウスHD ISBN 4-938335-04-2


はじめに
I 体力測定の意義
 1.体力測定とは何か?
 2.スポーツ傷害予防のための測定・評価の考え方
 3.新人選手のための体力測定
 4.健康に関連した体力の測定・評価

II 筋力
 5.筋力のみかた
  1.筋力測定の方法
  2.フィードバックの仕方
 6.筋力評価法の誤解
  1.健側比を用いた評価について
  2.H/Q比について

III 身体組成
 7.身体組成のみかた
 8.皮下脂肪厚測定による身体組成の評価とその注意点

IV 柔軟性
 9.柔軟性のみかた
 10.傷害予防と競技力向上における柔軟性評価の意義

V 関節不安定性(関節弛緩性)
 11.関節不安定性のみかた

VI アライメント
 12.アライメントのみかた
 13.ランニング障害予防のための下肢アライメントの評価
 14.足アーチの測定と評価

VII 傷害予防と競技力向上に役立つ測定・評価
 15.体重支持力の評価
 16.重量級選手の体脂肪率と脚筋力の評価
 17.力の立ち上がりの評価
 18.トレーニングマシーンを用いた脚筋力測定法の提案
 19.腹筋力評価法としての上体起こしテストの妥当性
 20.ハムストリングス肉ばなれの発生と脚筋力
 21.間欠的パワーテストからみた瞬発力と持久力
 22.パワーの発揮様式からみた競技選手の体力特性
 23.素早い動きの評価としてのステッピングテストの有効性

VIII 各種コンディショニングの科学的裏付け
 24.テーピングの有効性を測る
 25.ストレッチングの有効性を測る
 26.運動後のアイシングの効果を測る

APPENDIX
 付章1 測定・評価の実施、データ加工、フィードバックについて
 付章2 測定・評価の実際と現場での応用

はじめに

 スポーツ選手のコンディショニングを行っていくうえで、「測定と評価」をどのように役立てるかというテーマは、現実的ではあるが意外に取り上げられていない感が強い。例えばスポーツ選手の体力テストに関しても、未だに古くから行われていた一般的なスポーツテストにゆだねてしまう場合が多い。競技力向上のためのトレーニング処方や能力判定をねらいとするならば、各スポーツ種目のもつ競技特性を踏まえ、スポーツパフォーマンスにつながる体力要素の項目を選択していく必要がある。また、スポーツ種目の特性に応じた傷害発生原因との関連性で評価できる内容を選考する必要がある。

 このように、しっかりとした科学的根拠をもった方法を、スポーツの現場に普及させることが重要であり、そのためには科学的な観点からコンディショニングを追及し、より実践的で現場に役立つ研究の成果をスポーツ現場にフィードバックしていくことが急務であると思われる。

 本書は、上記のようなスポーツ現場のニーズを踏まえ、スポーツ選手を中心とした現場におけるコンディショニングに役立つ情報を提供することを目的として月刊トレーニング・ジャーナル誌上で約4年半にわたり隔月連載したものを再編集してまとめたものである。

 連載期間中、私の記事の内容に対して読者の方々から前向きなご意見を多数いただいた。現場のトレーナーやコーチの方からは「さっそく試してみた」「私も同様なことをやっていたので自信が持てた」「選手を教育する際のネタにしています」など、学生トレーナーからは「卒論のテーマにして同様な実験をやってみました」「勉強会の資料に使っています」などである。測定方法や実践的研究結果などについて、熱く論じ合ったこともあった。

 私の考え方やデータ(情報)、アイデアなどに興味を持ち、それらを現場で実践的に活用していただけることは、非常に大きな喜びであり励ましでもあった。

 トレーナーとして現場に密接に関わる研究者として、多くの実践的な研究情報や科学的裏付けを「現場からの肉声」を常に意識しながら、できるだけわかりやすく伝えていく仕事が私にとっての1つの「トレーナー活動」であると信じている。

 本書は、第1章から第6章ではコンディショニング評価のための測定方法や留意点に関する内容が中心となっており、第7章と第8章では測定データに基づいた新たなテストおよび評価の方法などの提案や、現場で用いられているコンディショニング法の理論的裏付けなどの内容を列挙してみた。また付章では現場での応用例として我々が行っているスポーツ選手に対する運動機能チェックや測定データのフィードバックの内容について紹介した。各章ごとにそれぞれのテーマで解説しているので、各章どこからでも興味のあるところから必要に応じて読んで頂いて結構である。

 本書がスポーツに携わる指導者(トレーナー、コーチ、医療関係者等)、選手、科学者を始め、健康づくりやリハビリテーションに関わる人たちに至るまで広く活用していただければ幸いである。

山本利春