山本利春 著、発行日:2012年5月発行、1,300円、出版社:河出書房新社、ISBN978-4-309-27321-1
身体のしくみ 身体各器官について
ケガの予防① 予防の第一歩は?
ケガの予防② ストレッチング
ケガの予防③ テーピング
ケガをしてしまったら① どんなケガにもRICE処置
ケガをしてしまったら② 病院のかかり方
よくあるケガ① 捻挫
よくあるケガ② 突き指
よくあるケガ③ 切りキズ
よくあるケガ④ 骨折
よくあるケガ⑤ 脱臼
よくあるケガ⑥ 打撲
よくあるケガ⑦ 肉離れ
よくあるケガ⑧ 膝の痛み
よくあるケガ⑨ 腰の痛み
よくあるケガ⑩ 肩の痛み
よくあるケガ⑪ アキレス腱断裂
よくあるケガ⑫ すねの痛み「シンスプリント」
よくあるケガ⑬ 筋けいれん
暑熱の障害① 日焼け
暑熱の障害② 熱中症
発育期のこどもによく起こるケガや障害 オスグッド病
近年、健康的な生活を送る上で、身体を動かしたりスポーツを行ったりすることを習慣とする方々が増えてきました。ケガをせず、疲れを残さずにスポーツを行なうことができたら、スポーツは身体にとてもいい運動効果を導きだし、活力ある健康な身体を作っていく上で大変重要なものになります。そして競技に携わるスポーツ選手にとっても、ケガをしないことは、効率よく競技成績を高める上で最も重要なことなのです。
高校生の頃、陸上競技を行っていた私は、大腿部の前面に激痛を伴うケガを負いました。当時、自分自身はもとより正しい知識を持った指導者も先輩もいませんでした。応急手当の方法もケガのメカニズムも分からず、筋肉痛と思いこみ、病院にも行かずにひたすら患部の周囲を温めてマッサージを繰り返しましたが、全くよくなりません。逆に痛みが強くなり悪化してしまいました。その後の高校時代はケガの繰り返しで、同じ部位を痛めるだけでなく、反対側の脚も、そして前面だけでなく裏側までも痛めてしまいました。最初の応急手当を誤ったこと、回復のためのリハビリを怠ったことで、よりケガをしやすくなってしまったのです。私の大腿部の筋肉の一部は今も硬く凹んでいます。最初の受傷が筋断裂を伴う重症の“肉離れ”だったのです。
コツコツと練習を積みせっかく競技記録も向上しながら、ケガで練習ができなくなる。痛みがなくなれば特別なリハビリもせず競技に復帰する。応急処置も不十分、休んでいる間に筋肉は弱く硬くなってしまっているので、さらにケガをしやすくなっていて、再びケガをする。その繰り返しでした。一度大きなケガをしたスポーツ選手がケガに関する何の知識もないと、このような悪循環におちいり、なぜケガを繰り返すのかの理由も分からないまま苦しみ続けることになってしまうのです。 「同じような思いをほかの人にはして欲しくない!」
それが私の現在のトレーナーとしての研究と指導の原点となっています。
スポーツに限らず、普段から身体の疲労をできるだけ早く取り除くことや、身体に異常を感じたり、痛みを感じたりしたときに、それがどのような原因で生じていることなのかをまず自分自身で考え、その上で無理をせず放っておかず、適切な応急手当を行った上、医療機関で診察や診断を受け、専門家の指導のもと治療や再発防止のための方法を実践していくことが大切です。本書がその一助となれば幸いです。
選手やスポーツ愛好家の皆さんが安全で効果的なトレーニングやスポーツ活動ができるように、スポーツのケガについての知識を中心に紹介してきました。人の身体は機会と違ってひとりひとりに違いがあり、同じような痛みや疲れであっても全てが同じ原因で同じ症状であるとは限りません。それぞれのケガの特徴や身体の機能・構造に見合った対処法を知っておくことがケガによる苦痛や不安を軽減するためには大切なことなのです。いま痛みや疲れで悩んでいる方や、ケガをしないように注意しながらスポーツを続けている方々に本書が少しでも役に立つものになれば幸いです。
最後に、本書をまとめるにあたり、企画の段階から協力していただき献身的に編集作業を引き受けてくださった上野真宏さんには心から感謝しています。また、本書の刊行のために尽力いただいた株式会社河出書房新社の山本濱賜氏と株式会社ゴーシュの五島洪氏には、この場を借りて心より御礼申し上げます。
2012年5月 山本利春
赤字は山本担当分(共著を含む)。