・山本利春責任編集:からだの科学 特別企画「ストレッチング」 第245号 日本評論社(2005年)

からだの科学
特別企画「ストレッチング」

山本利春 編


<序文>

 高校時代、筆者は陸上競技の選手だったが、いつもけがに悩まされていた。特に大腿部の肉離れが多く、何度も再発を繰り返していた。現在のスポーツ現場では肉離れの予防、治療においてもストレッチングは欠かせない存在だが、残念ながら当時はまだ日本に「ストレッチング」は普及していなかった。ストレッチングが日本に上陸したのは筆者が大学1年生のときであった。今思えば、もっと早くストレッチングを知っていれば、筆者自身もあれほどけがの再発を繰り返し、悩める青春時代を過ごしていなかったかもしれない。
 そのけがの多い苦悩の選手時代の経験から、スポーツ選手の傷害予防などを専門とするスポーツトレーナーの分野に進んだ。選手が少しでもよい状態で競技ができるように裏方としてサポートする役目である。ストレッチングは、選手のからだを整える(コンディショニング)有用なテクニックであり、トレーナーにとって最大の武器であるといえる。
 ストレッチングが日本のスポーツ界を始め、健康づくりの分野においても広く利用されるようになって二十数年が経過したが、どれほど進歩しただろうか? ストレッチングが有効であることは多くの理解は得られているが、目的に応じてその効果をより有効にするためのプログラム・デザインについては、同じく筋肉を主なターゲットにしたコンディショニングテクニックである筋力トレーニングに比べると極めて情報が少ない。新たなストレッチングの方法や考え方が紹介されてはいるが、それぞれの方法を、いつ、どのような目的で用いたらよいかといったノウハウがあまりにも不足している。本特別企画では、改めてストレッチングの最先端の知見を集約することで、読者の方がたへのストレッチングへの関心を高め、さらなる発展のプロローグとしたい。
(やまもと・としはる/コンディショニング科学)

ストレッチングの方法と効果山口太一・石井好二郎
ストレッチングと疲労回復後藤篤志・下嶽進一郎
ストレッチングと筋萎縮の抑制笠原政志・山本利春
ストレッチングと競技パフォーマンス魚住廣信
パートナーストレッチング伊藤マモル
PNFによるストレッチング市川繁之
IDストレッチング鈴木重行
アクアストレッチング山本利春・太田千尋
ストレッチテスト小粥智浩
痛点ストレッチ宗田 大